学会の名称変更について

日本遺伝性腫瘍学会(旧 日本家族性腫瘍学会) 理事長
兵庫医科大学外科学講座 下部消化管外科 冨田尚裕

2019年6月から、日本家族性腫瘍学会は、日本遺伝性腫瘍学会へと学会名称を変更いたしました。本学会としましては、1994年に家族性腫瘍研究会として発足してから本年は丁度25周年の節目の年にあたりますが、今回の学会名称変更の背景・経緯について以下簡単に説明させていただきます。

① 時代的背景の推移
本学会が当初、家族性腫瘍研究会として発足した1994年当時は、我が国、特に一般市民においては、“遺伝”というものに対する否定的な印象がかなり強かった時代でもあります。その後、遺伝・遺伝性腫瘍に関する一般市民の理解・認知は徐々に進んできましたが、それは、ヒトゲノムプロジェクトに始まり、本年6月のがんパネル遺伝子検査の保険承認にも代表されるがんゲノム医療の急速な進展・臨床実装化と軌を一にしています。
遺伝性腫瘍の遺伝学的検査については我が国で非常に遅れていた分野でしたが、2016年4月にようやく2つの遺伝子、網膜芽細胞腫におけるRB遺伝子と甲状腺髄様癌におけるRET遺伝子、についての保険収載がなされました。遺伝学的検査に関しては、現在、一部の薬物療法の適応決定のためのコンパニオン診断としての保険適応が認められるなどの追い風もあって、近い将来に、もっと頻度の高い遺伝性腫瘍である遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)やLynch症候群などにおける診断目的の遺伝学的検査としての保険承認の期待も高まってきています。
これら近年の我が国の状況、特に遺伝性腫瘍に関する関心・認知度の高まりなどを考慮すると、日本家族性腫瘍学会という名称はその時代的・社会的意義を既に全うしたとも考えられ、一般市民によりわかりやすい名称、すなわち“日本遺伝性腫瘍学会”と改称することが適切ではないかという意見を近年度々耳にするようになってきました。すなわち、“がんゲノム医療“時代における時代的要請による学会名称の提案とも言えます。

② 名称変更についての学会内の手続き
2019年1月に、理事メーリングリストにて、理事長名ですべての理事・監事に対して、学会名称変更についての理事長提案が為され、各位の意見聴取が行われましたが、名称変更の基本方針についてほぼ全員の賛同が得られました。
学会名称変更が承認された後に必要となる諸手続きについての検討・実行する部署が必要となり、総務委員会(担当理事:石田秀行先生)の所掌の下、一時的な(ad hoc)組織として学会名称変更ワーキンググループが設置されました。メンバーは、委員長:西垣昌和(京都大学 人間健康科学系)、委員:織田信弥(九州がんセンター 臨床研究センター)、甲畑宏子(東京医科歯科大学 統合研究機構)、矢形 寛(埼玉医科大学総合医療センター ブレストケア科)、アドバイザー:高山哲治(徳島大学医学部 消化器内科)、田村和朗(近畿大学理工学部 生命科学科)(氏名:敬称略)の諸氏です。
また、それと平行して、理事長名で、学会の15の各種委員会の担当理事宛、学会名称変更に伴ってそれぞれの理事が担当する学会事業において考慮・検討せねばならぬ問題点のリストアップを求め、ワーキンググループでは、その結果も踏まえて、まず、学会名称変更に必要なすべての手続きについて時系列でリストアップすると共に、学会名称変更に伴って発生することが想定される色々な問題等についての検討を行いました。
2019年4月15~30日、評議員(一部、評議員経験者を含む)に対するアンケート調査をwebフォームにて実施しましたが、14名より回答を得て、2名を除いて名称変更に賛同するという結果でした。ただ懸念事項として、「家族性腫瘍専門医」を「遺伝性腫瘍専門医」と変更する場合、「臨床遺伝専門医」との異同について混乱をきたす可能性などの指摘もあり、これを受けて、遺伝関連3学会(日本人類遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会、日本遺伝子診療学会)に、名称変更についての背景および今後の計画について、正式変更前にあらかじめ通知することとし、5月15日に理事長名義で文書を送付しています。
2019年5月13日~30日、一般会員に対するアンケート調査を、同じくwebフォームにて実施しました。65名より回答を得て、9割は賛同する意見でした。
以上の結果を踏まえて、6月13日の理事会で会則変更が決定し、それに必要な学会定款・定款細則の変更がすべて承認され、同日の社員総会(評議員会)においても最終承認されました。これをもって正式に本学会は、“一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会“として新たなスタートを切ることとなりました。ホームページ上の学会名称も、即時、日本遺伝性腫瘍学会、英文名:The Japanese Society for Hereditary Tumors (JSHT)と改称しています。

③ 今後の予定
関連する諸学会・団体への学会名称変更のお知らせは、今後速やかに実施する予定です。
また、学会名称変更に伴って、学会の機関誌である“家族性腫瘍”誌や学会の主催するセミナー、また各種の称号・資格についても順次改称を行っていく予定です。

“日本家族性腫瘍学会”から“日本遺伝性腫瘍学会”への、今回の学会名称変更は、急速に臨床実装が進展している“がんゲノム医療”の潮流に即した時代的要請に基づくものであります。長年親しんできた“家族性腫瘍”という言葉から脱却して、今後は、“遺伝性腫瘍”という言葉によって、患者さん・ご家族と共に我々医療者も“遺伝”・“腫瘍”という2つの大きな問題を正面から見据えて、遺伝性腫瘍の診療・研究・教育に尽力することが重要であると考えております。会員諸兄のご理解・ご協力を心よりお願いする次第です。

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