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遺伝性大腸がんのひとつである、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん:Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer:HNPCC)は大腸がんや子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、腎盂・尿管がんなどの発症リスクが高まる疾患です。全大腸がんの2-5%程度がリンチ症候群(HNPCC)と考えられ1,2,3)、最も頻度が高い遺伝性腫瘍の一つとされています。 |
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リンチ症候群(HNPCC)の臨床像 |
リンチ症候群(HNPCC)は、大腸がんの若年発症、異時性あるいは同時性の大腸多発がんおよび多臓器がんの発症が特徴です。4)リンチ症候群(HNPCC)の平均発症年齢は43-45歳と考えられ、20歳未満での発症は比較的少数です。2) リンチ症候群(HNPCC)の遺伝子変異を持つ人では、約80%が生涯の間に大腸がんを発症する11,15,16)と報告されています。また、女性では、20-60%が生涯に子宮内膜がん(子宮体がん)を発症する11,16)とされています。リンチ症候群(HNPCC)は必ずしも他の血縁者と同様の症状を示すわけではなく、遺伝子変異を持っていても生涯発症しない場合もあります。 |
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リンチ症候群(HNPCC)の診断 |
リンチ症候群(HNPCC)の診断基準として、アムステルダム基準I(1990年)と改訂されたアムステルダム基準II(1999年)(表2)1,2,4,5,6,7)があります。しかし、アムステルダム診断基準に合致しない場合でも、若年発症や大腸がん、子宮内膜がんなどの多重多発がんを発症している場合にはリンチ症候群(HNPCC)の可能性を考慮する必要があります。 |
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リンチ症候群(HNPCC)の遺伝と原因遺伝子 |
リンチ症候群(HNPCC)の原因は、生殖細胞系列でのミスマッチ修復遺伝子(MSH2・MLH1・MSH6・PMS1・PMS2)の変異です。リンチ症候群(HNPCC)は常染色体優性遺伝形式を示し、性別に関係なく、子供に50%の確率で遺伝します。⇒遺伝形式の説明 ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異がリンチ症候群(HNPCC)診断の決め手となりますが、家族歴から強くリンチ症候群(HNPCC)が疑われる場合でも必ず変異が見つかるわけではありません。リンチ症候群(HNPCC)の遺伝子診断では、MSH2・MLH1遺伝子の変異を最初に調べます(これまでに変異が報告されている症例の90%以上はMSH2・MLH1遺伝子の変異です)。その次に多く変異が報告されているのがMSH6遺伝子ですが、全報告例の5%以下であり、比較的少ないものと考えられます。2) |
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リンチ症候群(HNPCC)の定期的ながんの検査 |
リンチ症候群(HNPCC)では、発症前の大腸全摘出術は一般に行われていませんが、大腸がんを発症した際には多発がんの発症を視野に入れ、大腸亜全摘出術を検討することもあります。しかし、日本を含め、手術術式に関しては統一された見解はありません。4)
リンチ症候群(HNPCC)の定期検査(サーベイランス)について、リンチ症候群の国際共同研究グループである、ICG-HNPCCからガイドライン(表3)が示されています。5,6,7)さらに家系に発症しているがんの種類や発症時の年齢等を参考にしながら個別に対応することも必要と考えられます。 |
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